「こんな感じのサイトを作りたいんです」
そう言って、AppleやNikeのサイトを見せてくれる方がいます。
気持ちは、よく分かります。かっこいいですよね。洗練されていて、余白がたっぷりあって、写真が大きくて、文字が少ない。ああいうサイトが作れたら、と思うのは自然なことです。
でも、ここで一つだけ知っておいてほしいことがあります。
あなたが作るべきサイトと、あなたが「かっこいい」と感じているサイトは、種類が違います。
コーポレートサイトとサービスサイトは別物
ネット上にあるサイトは、大きく分けると2種類あります。
コーポレートサイト・ブランディングサイトと、サービスサイトです。
| コーポレートサイト | サービスサイト | |
|---|---|---|
| 目的 | ブランドイメージを伝える | 申し込み・問い合わせを取る |
| 見る人の状態 | すでに興味がある | まだ知らない・興味がない |
| 代表例 | Apple、Nike、トヨタ | 街の歯医者、個人教室、小さな会社 |
| デザインの方向 | 余白多め・文字少なめ・イメージ重視 | 情報多め・説得力重視・行動を促す |
あなたがネットで検索していて、「このサイト、かっこいい」「おしゃれだな」と思うサイトの多くは、コーポレートサイトやブランディングサイトです。
Appleのサイトを見て「かっこいい」と思うのは当然です。でも、Appleのサイトを見に行く人は、最初からAppleに興味がある人なんですよね。
iPhoneが欲しいと思って見に行く。MacBookが気になって見に行く。「Apple」を知っているから見に行く。
あなたの会社やお店のサイトは、そうではありません。あなたのことを知らない人が、検索で初めてたどり着く場所です。
ここが決定的に違います。
知らない人に「伝える」のは、知っている人に「見せる」のとは別の仕事
Appleのサイトは、余白が広くて、文字が少なくて、写真が美しい。それで成立しているのは、商品をすでに知っている人が見に来るからです。
あなたのサイトに来る人は、あなたのことを知りません。何をしている人なのか、何が得意なのか、なぜ頼むべきなのか、全部説明しないと分からない。
余白を広くとって、文字を減らして、写真を大きくしたら——何も伝わらないまま、閉じられます。
| Appleのサイト | あなたのサイト | |
|---|---|---|
| 来る人 | iPhoneが欲しい人 | あなたを知らない人 |
| 必要なこと | かっこよく見せる | 何者かを伝える |
| 文字の量 | 少なくていい | 多くていい(むしろ必要) |
| 最初の3秒 | ブランドが伝わればOK | 「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」が伝わる必要がある |
見る人がすでに興味を持っている前提で作るサイトと、全く知らない・興味がない状態で見てもらうサイトは、考え方も作り方も全く異なるんです。
「かっこいい」は、否定しません
ここで、はっきり書いておきます。
かっこよく作れるに越したことはないです。それは強みになります。
AIを使えば、かっこいいサイトは今まで以上に簡単に作れるようになりました。CSSを学べば、AIが作ったものをもっとかっこよく、もっとおしゃれに仕上げることもできます。
やりたいことは、なんでもやってください。
かっこいいデザイン、おしゃれなレイアウト、動きのある演出——全部やっていい。
ただ、その上に成果を載せていけるかどうか。そこで差がつきます。
かっこよく作れて、おしゃれに作れて、そこで満足して止まってしまうことが問題なんです。
止まらなければいい。かっこよさの上に、「伝わる」を載せる。それができれば、最強です。
小さな会社や個人事業主に必要なのは、サービスサイト
あなたがこれからサイトを作るとき、真似すべきなのはコーポレートサイトではありません。
サービスサイトです。
サービスサイトとは、「知らない人に、自分のサービスの価値を伝えて、行動してもらう」ためのサイトです。
特徴は——
- 最初の3秒で、「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」が分かる
- 読み手の視点で書かれている(自分が言いたいことではなく、読み手が知りたいこと)
- 読み進めるうちに、自然と「申し込もう」と思える流れがある
- スマホで見たときに、きちんと魅力が伝わる
「デザインが綺麗かどうか」は、二の次です。伝わるかどうかが先です。素人っぽく見えるサイトの直し方では、「伝わる」ために何を直すべきかを具体的に書いています。
「デザインは綺麗になったが、問い合わせが増えない」
これは、サイトの相談を受けていて本当によく聞く言葉です。
なぜそうなるかというと、制作の過程で「見た目」に意識が集中してしまうからです。
明確な目標(何件の問い合わせが欲しいか、誰に来てほしいか)を決めずにプロジェクトが進むと、関係者の関心はどうしても見た目に向きます。
「もう少しかっこよくできませんか」「ここ、今風にしてください」「この写真、もっと大きく」——感覚的な言葉が飛び交い、その場の空気に合わせてデザインが作られる。
こうしてできたサイトは、一見きれいで洗練されているように見えます。でも、中身は空っぽです。
誰に向けたサイトなのか。何を伝えたいのか。見た人にどう動いてほしいのか。そこが抜けている。
だから、綺麗なのに問い合わせが来ない。この問題については「作れるだけでは意味がない」でも詳しく触れています。
真似するなら、こういうサイトを選んでください
では、お手本にすべきサイトはどう選べばいいか。
大企業のコーポレートサイトではなく、「知らない人が見ても、何のサービスか分かるサイト」を探してください。
チェックポイントは4つです。
- スマホで開いて、最初の画面で何のサイトか分かるか
- 読み進めると、自分の悩みに寄り添っている感じがするか
- お問い合わせや申し込みのボタンが、自然な場所にあるか
- 読み終えたときに、「ここに頼んでみようかな」と思えるか
この4つを満たしているサイトを見つけたら、それがあなたのお手本です。
有名かどうかは関係ありません。むしろ、小さな会社や個人事業主のサイトで、この4つを満たしているものの方が、参考になります。なぜなら、あなたが作るサイトと同じ条件で戦っているから。
これからWebデザイナーになる方へ
もしあなたがこれから仕事としてWeb制作をしていくなら、知っておいてほしいことがあります。
あなたが主に作っていくことになるのは、サービスサイトです。
AppleやNikeのようなサイトを作る仕事は、大手の広告代理店や制作会社にしか来ません。そしてそれは、ごく一部の案件です。
小さな会社の社長から「うちのホームページを作ってほしい」と頼まれたとき。一見コーポレートサイトの制作に見えるかもしれないけれど、既存の情報を並べるだけでは不十分な場合がほとんどです。
実際に求められるのは、サービスサイトの考え方です。
「この会社に頼もう」「ここのサービスを使ってみよう」——そう思わせるサイトを作ること。それが、あなたの仕事になります。
かっこいいサイトを作れることは、土台として大事です。その上に、「伝わる」を載せられるかどうか。
両方できる人は、まだそんなに多くありません。だから、両方学んだ人は選ばれます。
自分のサイトで試してみてください
ここまで読んで、「じゃあ自分のサイトはどうなんだろう」と思った方。
今すぐ、スマホで自分のサイトを開いてみてください。もしまだサイトを持っていないなら、「こんな感じにしたい」と思っているお手本のサイトで構いません。
先ほどの4つのチェックポイントで見てみてください。
- 最初の画面で、何のサイトか分かるか
- 読者の悩みに寄り添っているか
- お問い合わせボタンが自然な場所にあるか
- 読み終えて、「頼んでみよう」と思えるか
答えが全部「はい」なら、あなたのサイトはサービスサイトとして機能しています。
1つでも「いいえ」があるなら、そこが改善のポイントです。何を直せばいいかが分かっている状態は、分からない状態とはまるで違います。
かっこいいサイトを作りたい。その気持ちを活かしたまま、成果が出るサイトを一緒に作りましょう。
