「あれ? いつものWebサイトが開かない……」
今まで普通に見れていたホームページが、ある日突然表示されなくなってしまったら、誰でもドキッとしてしまいますよね。特にお仕事で使っているサイトなら、なおさら焦ってしまうと思います。
でも、安心してください。Webサイトが表示されなくなるのには、必ず「理由」があります。そして、その原因は魔法のように不可解なものではなく、一つひとつ順を追って確認していけば、必ず突き止めることができるパズルのようなものです。
この記事では、Webサイトが表示されなくなる原因を「よくある順(確認しやすい順)」に並べ、原因の特定方法と解決策をわかりやすく解説していきます。
専門的な話も出てきますが、できるだけイメージしやすいように説明しますので、一緒に見ていきましょう。
【ステップ1】パソコン・ネット回線
サーバーやシステムの設定をいじる前に、一番最初に確認すべきなのは「自分だけが見れていないのではないか?」という点です。
意外と多いのが、Webサイトそのものは元気なのに、自分のパソコンやスマホの調子が悪いだけ、というケースです。
1.ブラウザの「キャッシュ」が悪さをしていませんか?
Webブラウザ(ChromeやSafariなど)は、一度見たページを次回すぐに表示できるように、画像やデータを一時的に保存する機能を持っています。これを「キャッシュ」と呼びます。
しかし、Webサイトが更新されたのに、ブラウザが古いキャッシュデータを使おうとすると、つじつまが合わずに表示がおかしくなることがあります。
確認方法:シークレットモード
一番簡単な確認方法は、ブラウザの「シークレットモード(プライベートブラウジング)」を使うことです。このモードはキャッシュを使わずに「まっさらな状態」で通信します。
もしシークレットモードで正常に見れるなら、原因はあなたのブラウザに残っている「古いキャッシュ」です。
解決策
ブラウザの履歴削除メニューから、「キャッシュされた画像とファイル」や「Cookie」を削除して、もう一度アクセスしてみてください。
2.ネット機器(ルーター)が疲れていませんか?
「ネットには繋がるけど、特定のサイトだけ見れない」という場合でも、ご自宅やオフィスのルーター(Wi-Fi機器)が原因のことがあります。
ルーターも小さなコンピュータなので、ずっと電源を入れっぱなしだとメモリがいっぱいになり、動作がおかしくなることがあります。
解決策:電源の入れ直し(パワーサイクル)
- モデムとルーターのコンセントを抜きます。
- そのまま1分間待ちます(これが大事! 電気を完全に放電させます)。
- モデムの電源を入れ、完全に起動するのを待ちます。
- 次にルーターの電源を入れます。
- パソコンを再起動して、もう一度確認します。
3.セキュリティソフトが「過保護」になっていませんか?
パソコンに入れているウイルス対策ソフトが、安全なサイトを「怪しい!」と勘違いしてブロックしてしまうことがあります。
一時的にセキュリティソフトの機能を「OFF」にして、サイトが表示されるか試してみてください。もし表示されたら、ソフトの設定でそのサイトを「許可リスト(ホワイトリスト)」に追加してあげましょう。
4.念のための「第三者の目」チェック
「やっぱり自分のせいなのか、サイトが壊れているのか自信がない…」という時は、Webサイトの生存確認をしてくれる無料ツールを使いましょう。
「https://downforeveryoneorjustme.com/」などのサイトにURLを入力すると、「あなただけですよ(It’s just you)」か「みんな見れてませんよ(It’s down)」かを教えてくれます。
【ステップ2】ドメインとDNS
ここからは、インターネット上の仕組みの話になります。Webサイトを表示するには、「ドメイン(住所)」と「DNS(住所録)」が正しく機能している必要があります。
1.ドメインの「有効期限」は切れていませんか?
これが実は一番怖い原因です。「うっかり更新費用を払い忘れていた!」というケースです。
ドメイン(例:example.com)には有効期限があります。期限が切れると、その瞬間から住所が無効になり、サイトにたどり着けなくなります。
症状
- サイトにアクセスすると「ドメインの有効期限が切れています」という広告ページや「このサイトにアクセスできません」のページが表示される。
- ブラウザに
DNS_PROBE_FINISHED_NXDOMAIN(ドメインが存在しません)というエラーが出る。
確認と解決策
「Whois検索」というツールを使って、自分のドメインの状態を調べます。
- ステータス確認
有効期限(Registry Expiry Date)が過ぎていないか確認しましょう。 - 解決策
すぐにドメイン管理会社(お名前.comやバリュードメインなど)の管理画面にログインし、更新料を支払ってください。ただし、期限切れから時間が経ちすぎていると、復旧できなかったり、高額な手数料がかかったりすることがあります。
2.インターネット上の「住所録(DNS)」のエラー
DNS_PROBE_FINISHED_NXDOMAIN や ERR_NAME_NOT_RESOLVED というエラーコードが表示される場合、あなたのパソコンが「そのドメインの場所(IPアドレス)を見つけられませんでした」と言っています。
解決策
- DNSキャッシュのクリア
パソコンが古い住所録を覚えている可能性があります。
Windowsならコマンドプロンプトでipconfig /flushdnsと入力すると、記憶をリセットできます。
Macならターミナルで sudo dscacheutil -flushcache; sudo killall -HUP mDNSResponder と入力すると、記憶をリセットできます。※ユーザーアカウントのパスワードを求められます - パブリックDNSの使用
ご契約のプロバイダのDNSサーバーが調子悪いかもしれません。ネットワーク設定でDNSサーバーをGoogleの「8.8.8.8」などに変更してみると、あっさり繋がることがあります。
【ステップ3】SSL/セキュリティエラー
最近のWebサイトは、通信を暗号化する「SSL(https)」が当たり前です。この鍵の仕組みに不具合があると、ブラウザは「危険です!」と警告を出して接続を遮断します。
1.「この接続はプライベートではありません」と出る場合
エラーコード ERR_SSL_PROTOCOL_ERROR などが表示されます。
意外な原因:パソコンの時計
実は、あなたのパソコンの日付や時刻が大きくズレていると、SSL証明書の有効期限を正しく判定できず、エラーになります。まずはカレンダーと時計が合っているか確認してください。
サーバー側の原因:証明書の期限切れ
サーバー側で設定しているSSL証明書(Let’s Encryptなど)の更新に失敗し、期限が切れている場合があります。これはサイト管理者がサーバーパネルから更新ボタンを押す必要があります。
2.「リダイレクトが多すぎます」と出る場合
ERR_TOO_MANY_REDIRECTS というエラーです。これは、サイトが「あっちに行って」→「いや、こっちに戻って」→「やっぱりあっち」という風に、無限にたらい回しにされている状態です。
よくある原因
CloudflareなどのCDNを使っている時によく起きます。CDN側は「https」で、サーバー側は「http」で通信しているのに、設定が噛み合っていないとこのループが発生します。CloudflareのSSL設定を「Full」に変更したり、ブラウザのCookieを削除したりすることで直ることが多いです。
【ステップ4】サーバー・ホスティング
ドメインもDNSも大丈夫なら、Webサイトのデータが置かれている「サーバー」の問題かもしれません。
1.レンタルサーバーの「更新費用」を忘れていませんか?
ドメインと同じくらい多いのが、レンタルサーバー代金の未払いです。
例えば、さくらインターネットでは支払い期限から一定期間(2ヶ月など)過ぎるとデータが完全に削除され、復旧できなくなってしまいます。エックスサーバーやミックスホストでも、料金未納でアカウントが「凍結」され、サイトが表示されなくなります。
解決策
すぐにサーバー会社の契約管理画面やコントロールパネルにログインし、契約状況を確認してください。「未払い」「凍結中」となっていたら、即座に支払いを済ませましょう。
入金確認後、数時間から数日で復旧することが多いです。
2.503 Service Unavailable
503 というエラーは、「サーバーが忙しすぎて対応できません」という意味です。
- 原因
テレビやSNSで紹介されてアクセスが殺到している、または安価なプランのサーバーで、他の利用者の影響を受けている可能性があります。 - 解決策
時間を置いてアクセスするか、頻発するようならサーバーのプランをグレードアップする必要があります。
【ステップ5】WordPress・アプリ
サーバーは動いているけれど、その上で動いている「WordPress」などのシステムがエラーを起こしているパターンです。これが最もバリエーション豊かで、頭を悩ませる部分です。
1.画面に「データベース接続確立エラー」と出る
これは「WordPress」が「データベース」と接続できない状態です。
原因と解決策
多くの場合、wp-config.php という設定ファイルに書かれている「データベースのユーザー名」や「パスワード」が間違っています。サーバーの管理画面で正しい情報を確認し、ファイルを修正する必要があります。サーバーのパスワードを変更した時などに起こりやすいミスです。
2.画面が「真っ白」になる
アクセスしたらエラーメッセージもなく、ただ画面が真っ白……。これは「White Screen of Death (WSOD)」と呼ばれる現象で、PHPプログラムのどこかで致命的なエラーが起きている状態です。
原因:プラグインやテーマの喧嘩
最近プラグインを更新しませんでしたか? 更新に失敗したり、プラグイン同士の相性が悪かったりすると発生します。
解決策
FTPソフト(サーバーのファイルを操作するソフト)を使って、wp-content/plugins フォルダの名前を一時的に plugins_old などに変更してみましょう。これでプラグインが強制的に全停止します。もしこれでサイトが表示されたら、犯人はプラグインの中にいます。
3.「現在メンテナンス中のため…」から戻らない
WordPressの自動更新中に、何らかの理由で処理が止まってしまうと、このメッセージが出続けることがあります。
解決策
これは簡単です。FTPソフトでサーバーに接続し、一番上の階層にある .maintenance というファイルを削除してください。これだけで元通りになります。
4.自動アップデートの失敗
WordPress本体の更新に失敗すると、重要なファイルが欠けてしまい、サイトが動かなくなることがあります。この場合は、手動でWordPressの最新版をダウンロードし、FTPでサーバー上のファイルを上書きする必要があります。
ただし、wp-content フォルダなどは上書きしないように注意!詳しい人にお願いするのが無難です。
【ステップ6】アクセス制限・403エラー
「403 Forbidden(閲覧禁止)」と表示される場合、あなたは「そこに入ってはいけません」と拒否されています。
1.WAF(Webアプリケーションファイアウォール)の誤検知
最近のレンタルサーバーには、サイトを守る「WAF」という強力なガードマンが標準装備されています。しかし、このガードマンが、あなたが記事を更新しようとしたり、設定を変更しようとしたりするのを「攻撃だ!」と勘違いしてブロックすることがあります(SiteGuardなどでよく見られます)。
解決策
サーバーの管理画面でWAF設定を一時的に「OFF」にしてみてください。もしそれで作業ができるようなら、WAFのログを確認し、あなたのIPアドレスを除外設定にしてから、再度WAFを「ON」に戻しましょう。
2.パーミッション(権限)の設定ミス
サーバー上のファイルには「誰が読めるか、書き込めるか」という権限設定(パーミッション)があります。自分であまりいじらない部分ですが、間違った設定(例えば 000 など)にしてしまうと、誰も見れなくなります。
一般的に、ファイルは 644、フォルダは 755 に設定するのが基本です。
まとめ:焦らず一つずつ確認しよう
Webサイトが表示されない原因は多岐にわたりますが、確認すべき順番は決まっています。
- 自分の環境: キャッシュクリア、ネット回線の確認。
- ドメイン・DNS: 有効期限と住所録の確認。
- サーバー: 利用料金の支払い状況と稼働状況。
- WordPress: データベース接続、プラグイン、メンテナンスモード。
- セキュリティ: 403エラーとWAF設定。
「なんだか難しそう…」と思うかもしれませんが、エラーメッセージ(503 や DNS_...)をGoogleで検索するだけでも、大きなヒントが得られます。
そして、何より大切なのは「バックアップ」です。
万が一、操作を誤ってデータを消してしまっても、バックアップさえあれば元の状態に戻せます。サーバー会社の自動バックアップ機能や、プラグインを使ったバックアップを日頃から心がけておきましょう。

