「せっかく学んでも、AIが進化したら全部無駄になりませんか?」
「Web技術の移り変わりが激しいから、今学んでもすぐ使えなくなるのでは」
この不安を抱えている方は多い。特にこの2〜3年、AIの進化が一気に目に見えるようになってから、余計にそう感じるのだと思います。
結論から。
30年の間に、消えた技術はたくさんあります。でも、残ったものがあります。
「残ったもの」が何かを知ってもらうのが、この記事の目的です。
1996年、ネット普及率3.3%の時代に始まった
私がホームページを作り始めたのは1996年です。
Windows 95が出て、パソコンというものが一般的になった時代です。インターネットがしたくて、富士通のFMVというパソコンを買いました。17インチのブラウン管のディスプレイが、パソコン本体の上に乗っかったデスクトップでした。
当時の日本のインターネット普及率は3.3%。ダイヤルアップ接続で、回線速度は28.8kbps。Yahoo! JAPANが始まった年です。Googleはまだ存在していませんでした。
秀丸エディターというテキストエディターをインストールして、HTMLタグを一つひとつ覚えながら、最初のサイトを作りました。
夢中でやっていたから、タグもすぐに覚えられた。自分が作ったものが、世界中の人に見てもらえる。そんな体験は、それまでの人生になかったんです。
消えた技術——テーブルレイアウト、Flash、Fireworks
テーブルレイアウト
ホームページのレイアウトを、表(テーブル)の罫線を使って組んでいた時代がありました。CSSで自由にレイアウトが組めるようになると、この手法は消えました。
Flash
動きのある派手なサイトを作れる技術です。一時期、Flashで作られたサイトが世の中にあふれていました。しかしスマートフォンで表示できないという致命的な問題があり、Adobeが2020年にサポートを終了しました。
Dreamweaver+Fireworks
Web制作専用のソフトウェアです。Macromediaという会社が作っていて、私はこの2つが大好きでした。
DreamweaverはHTMLを書くためのエディター、FireworksはWeb用の画像を作るための専用ツールです。この2つを組み合わせて、何年もサイトを作り続けていました。
しかし、MacromediaがAdobeに買収された後、Fireworksは開発が終了しました。
Fireworksが終了したときは、右腕を失うぐらいのダメージでした。
大げさではなく、本当にそう感じました。毎日使っていた道具が、ある日なくなる。代わりのツールはあるけれど、長年の手になじんだ動きが全部やり直しになる。
変化のたびに何が起きたか
テーブルレイアウトからCSSへ。Flashからレスポンシブデザインへ。静的HTMLからCMS(WordPress等)へ。パソコン中心からスマホファーストへ。そしてAIの登場。
変化が来るたびに、「今までのやり方を捨てて、新しいやり方を覚える」という作業が発生します。
私は当然、テーブルレイアウトもFlashもガッツリ通ってきました。HTMLやCSS、Web制作のツール、WordPressの変化と進化——常にその渦中にいた感覚です。いつも学ぶことが多くて大変でした。
でも、楽しかった。
楽しかったのは性格の問題じゃなく、理由があります。
残ったもの——「伝えたいことを形にする力」
30年で消えたものはたくさんあります。テーブルレイアウトもFlashもFireworksも消えました。
でも、残ったものがあります。
それは、「伝えたいことを形にする力」です。
道具は変わりました。手法も変わりました。でも、「このサイトを見に来る人は誰か」「その人に何を伝えたいか」「どうすれば伝わるか」——この問いは、30年間ずっと同じです。
テーブルレイアウトの時代でも、Flashの時代でも、WordPressの時代でも、AIの時代でも。作る道具が何であれ、「伝えたいことを形にする」という仕事の本質は変わっていません。
私が30年間、Web制作をやめようと思ったことが一度もないのは、ただ作るだけの仕事をしてこなかったからだと思います。成果を出すことに喜びを感じているし、うまくいったときはガッツポーズが出る。
ただホームページを作るだけの仕事だったら、とっくに飽きて続けていなかった。
技術が変わっても無駄にならないもの
具体的に、何が残り、何が無駄になるかを整理します。
無駄になる可能性があるもの
- 特定のツールの操作方法(そのツールが消えたら使えない)
- 特定のプログラミング言語の書き方(言語が廃れたら需要が減る)
- 古い手法に特化した知識(テーブルレイアウト、Flashなど)
無駄にならないもの
- このサイトは誰のためのものかを考える力
- 何を伝えれば人が動くかを設計する力
- 情報を整理して分かりやすく見せる力
- トラブルが起きたときに原因を切り分ける力
- 新しい道具を触って「これは使える」「これは使えない」を判断する力
上の5つは、道具が何に変わっても通用します。HTMLがなくなろうが、WordPressがなくなろうが、AIがさらに進化しようが。
AI時代の今、何が起きているか
ここ数年の変化は、確かに大きいものです。
でも正直に言うと、Web制作の技術的な進化は、ここ数年は落ち着いていました。常に学び続けなければならない状況がずっと続いてきたのですが、大きな変化は一段落していた。
だから今は、一気にまとめて身につけてしまうのに良いタイミングかもしれません。
そしてAIの登場は、脅威というより追い風です。
私は今、リサーチャーのAI、デザイナーのAI、エンジニアのAI、コピーライターのAI、WordPressを操作するAI——こうした複数のAIと、ディレクターの私が一緒に動きながらサイトを制作しています。外注する必要が一切なくなりました。制作時間は3分の1から4分の1に。しかも制作のクオリティも上がっています。この働き方についてはAIチームのディレクターになるで詳しく書いています。
今から始めるなら、AIをフル活用することで、今世の中にいる5年・10年やってきたWebデザイナーよりも数段進んだ状態になれる可能性もあります。
これは30年この仕事をしてきた時間感覚で言っています。AI時代にホームページ制作を習う意味についても、あわせて読んでみてください。
変化に置いていかれない人の共通点
30年の間に、変化についていけなくなった人も見てきました。逆に、何度変化があっても乗り越えてきた人もいます。
違いは何か。
土台を理解しているかどうかです。
テーブルレイアウトしか知らない人は、CSSが出てきたとき途方に暮れました。でもHTMLの構造を理解していた人は、「レイアウトの方法が変わっただけだ」と受け止められた。
Flashだけ使えた人は、Flashがなくなったとき詰みました。でも「ユーザーの体験を設計する」という考え方を持っていた人は、別の手段に移行できた。
道具の使い方だけ覚えた人は、道具がなくなったら終わります。でも、なぜその道具を使うのかを理解している人は、道具が変わっても応用が利きます。
もうひとつ。新しいものを試す習慣があるかどうか。
変化を怖がって古いやり方にしがみつく人は、置いていかれます。でも「ちょっと触ってみよう」と手を動かせる人は、意外と早く追いつく。
25年越しの弱点克服
2000年にWebデザインコンテストに出たとき、私はこう思っていました。デザイン力ではプロのデザイナーに敵わない。技術力ではプロのエンジニアに敵わない。
だから「見た人の心を動かすコンテンツ力」で戦うと決めて、グランプリを取りました。
それから25年。ずっと弱点だと自覚してきたデザイン力とプログラミング力を、AIを味方にすることで克服できました。
デザイナーのAIがデザイン案を出してくれる。エンジニアのAIがコードを書いてくれる。私はディレクターとして、「これでいい」「ここを直して」と判断する役に徹する。
25年前に敵わなかった部分を、AIが埋めてくれた。しかも、判断する力は25年分積み上がっている。
技術が変わることは、失うことじゃない。選択肢が増えることです。
これから学ぶ方へ
「今学んでも、すぐ無駄になるのでは」という不安は、裏を返せば「変化に対応できる自信がない」ということだと思います。
自信は、一人で勉強していても身につきにくい。変化を30年見てきた人間の隣で学ぶことに意味があるとすれば、そこだと思っています。「そもそもWeb制作はオワコンなのでは」という疑問にはホームページ制作はオワコンかで答えています。
何が変わっても通用する力を、一緒に身につけていきましょう。
これからの変化にどう備えるか、現場から見えていることをお話しします。
「自分の目的に合う学び方が分からない」という方は、何から学べばいい?——目的別の学習ルートも参考にしてください。
AIの活用も含めて、今の時代に合った学び方をお伝えします。ジャンプアップコースやスポットレッスンも含めて、ご相談ください。
