「サイトを独自で作る場合、費用はどれくらいかかりますか」
「知人から頼まれたのですが、いくらで請ければいいか分かりません」
「見積もりを出したら高いと言われました。下げるべきですか」
発注する側も、受注する側も、値段の決め方が分からない。
これは、どちらかが悪いわけではないんです。ホームページの制作費には定価がありません。同じ「5ページのサイト」でも、個人なら5万円、制作会社なら50万円。10倍違うことが普通にある。何にそんな差があるのかが、外から見えないんです。
結論から。
制作費を「時給換算」で決めてはいけません。値段の基準は、あなたが何時間かけたかではなく、相手の商売にどれだけの成果を生むかです。
制作費の相場帯と、その差の正体
まず、今の相場を整理します。
| 依頼先 | 5ページ程度のサイト | 差の正体 |
|---|---|---|
| クラウドソーシング | 3万〜10万円 | テンプレートに流し込む作業 |
| 個人・フリーランス | 10万〜30万円 | デザインとコーディング |
| 小規模制作会社 | 30万〜80万円 | ディレクション+戦略が入る |
| 中規模以上の制作会社 | 80万〜300万円 | チーム体制+保守運用まで |
この差は、技術力の差ではありません。
3万円の仕事も300万円の仕事も、使う技術はWordPressだったりします。違うのは、「何を考えているか」です。
安い仕事は、言われたものを作る。高い仕事は、作る前に「誰に何を伝えるか」を設計する。そこに時間と頭を使っている。
あなたがこれから値段を決めるとき、自分の仕事がこの表のどこにいるのかを知っておく必要があります。
なぜ時給換算で決めてはいけないのか
副業で始めた人がやりがちなのが、作業時間×時給で計算するやり方です。
「20時間かかったから、時給2,000円で4万円」。分かりやすいんですが、これには2つの問題があります。
1つ目は、速くなると損をすること。
経験を積むと、同じ品質のサイトを半分の時間で作れるようになります。10時間で終わったら2万円。上手くなるほど安くなる。これ、おかしいですよね。
2つ目は、価値と値段がずれること。
たとえば、月に10件の問い合わせが来るサイトを作ったとします。そのうち2件が成約して、1件あたりの売上が50万円だったら、月100万円の売上がそのサイトから生まれている。20時間×2,000円の4万円が、その価値に見合うかどうか。
逆に言えば、40万円の仕事なら、100万円以上の成果が出ないとダメなんです。私はそう考えて値段を決めています。お客さんが払った金額の何倍もの価値を返せるかどうか。返せないなら、その金額で請けてはいけない。(この考え方について、詳しくは作れるだけでは意味がないで書いています。)
成果から逆算する3ステップ
では、具体的にどう決めるか。
ステップ1:相手の商売を知る
まず、クライアントのビジネスを理解します。月の売上はいくらか。1件あたりの利益はいくらか。今のサイトからどれくらいの問い合わせが来ているか。
これを聞かずに見積もりを出す人がほとんどですが、聞かないと値段の根拠が作れません。
ステップ2:サイトが生む成果を見積もる
新しいサイトにすることで、問い合わせが月に何件増えそうか。その何割が成約しそうか。ざっくりでいいので、数字を置いてみる。
仮に月3件増えて、1件あたりの利益が10万円なら、月30万円。年間360万円。サイトが2年動けば720万円分の成果です。
ステップ3:その成果から逆算する
720万円の成果を生むものに、いくらの値段をつけるか。10%なら72万円、5%でも36万円。
これが「成果から逆算する」やり方です。時給とは全く違う金額が出ます。
もちろん、最初はこんな計算ができないこともあります。まだ実績がないから、成果を約束できない。そういう段階なら、相場の下の方から始めて、実績が増えたら上げていく。それは正しい判断です。
大事なのは、いつまでも時給計算のままにしないこと。
見積書に必ず入れる7項目
実務の話に移ります。見積書に入れないと後でトラブルになる項目を書きます。
| 項目 | 書く理由 |
|---|---|
| 修正回数 | 「何回でも直します」は約束してはいけない。3回、5回と上限を決める |
| 修正の範囲 | テキスト修正なのか、デザインの変更なのか。範囲を明記する |
| 素材の提供 | 写真や文章は誰が用意するか。クライアントが出さないなら別途費用 |
| 対応範囲外の作業 | SEO、コンテンツ作成、SNS連携は別料金なのか含むのか |
| 公開後の保守 | 更新費、サーバー管理費、月額の有無。ここを曖昧にすると一番揉める |
| 納期と追加費用 | 急ぎの場合の割増、クライアント都合の遅延による延長費用 |
| 支払い条件 | 着手金・中間金・完了時の配分。全額後払いは避ける |
この中で、一番トラブルになるのは「公開後の保守」です。
私自身、過去にここが曖昧だったために揉めた経験があります。きちんと契約書を交わすようになってからは、トラブルはほとんど起きていません。
口約束で進めると、1年後に「聞いていなかった」と言われます。面倒でも、書面に残してください。
値切られたとき、どうするか
理由のない値切りは、断ります。
「高いからもう少し安くしてほしい」——これだけでは、理由になっていないんです。
見積もりの金額には根拠があります。作業量、クオリティ、提供する価値。それを「高い」の一言で下げろと言われたら、相手は仕事の価値を見ていません。
無理をして受けても、だいたいうまくいきません。無理した案件は、途中で必ずどこかに歪みが出ます。
ただし、予算に限りがあるから相談したい、というのは別の話です。
その場合は値段を下げるのではなく、作業範囲を減らします。全10ページの予定を5ページにする。SEO対策は次のフェーズにする。金額と内容を一緒に調整します。
値段だけ下げるのは、絶対にやってはいけない。
知人から頼まれたとき
「知人に頼むと必ず揉める」という声が、本当にたくさんあります。
理由は単純で、仕事の関係にならないからです。友人だから安くして、お金の話はしづらい、修正も断りにくい。
知人の依頼を受けるなら、他人に出すのと全く同じ見積書を作ってください。
「友達だから安くするよ」は、お互いのためになりません。安くした分だけ、あなたの中で不満が溜まります。修正が重なっても「友達だから断れない」になる。
断ることも選択肢です。「ごめん、知人の仕事は受けないことにしている」と言っていい。実際にそうしている人は多い。
もし受けるなら、お金をもらう以上はプロとして。契約書まで交わす必要はなくても、やることとやらないこと、修正回数、納期は書面に残してから始めてください。
値上げのタイミング
最後に、値上げの話を少しだけ。
副業で始めたばかりの段階では、相場の下限から入ることになります。それは仕方がない。
値上げすべきタイミングは、「安く請けて後悔した案件」が出たときです。
何十時間もかけたのに、報酬が3万円。追加の修正が延々と続く。この仕事のために、本業に支障が出ている。——そうなったら、次の案件からは金額を上げてください。
上げたら仕事が来なくなるのでは、と思うかもしれません。来なくなる分もあります。でも、その代わりに来る仕事の質が変わります。安い仕事を3本受けるより、適正な価格の仕事を1本しっかりやった方が、実績としても次につながります。作品の見せ方はポートフォリオの作り方で詳しく書いています。
値段の話は、教室でもやっています
ここまで書いたことは、副業や独立を考えている方が避けて通れない部分です。
「社会人が副業のための講座(全24回・6ヶ月)」では、制作だけでなく見積りや顧客対応も扱います。「ホームページ作成を仕事にして食べていけるようになる講座(全48回・12ヶ月)」は、さらに踏み込んで、営業の仕方から契約のやり方までカバーしています。
技術だけ学んでも、値段を決められなければ仕事にはなりません。ここを一緒に考えられる場所は、正直あまり多くないと思います。
「自分の目的に合う学び方が分からない」という方は、何から学べばいい?——目的別の学習ルートも参考にしてください。
今抱えている案件の見積り相談も歓迎です。「この金額で合っているか」「断った方がいいか」——一緒に考えます。
