「ポートフォリオに載せる作品のお題が浮かばず、悩んでいます」
「架空のクライアントを想定して作るべきですか?」
「AIにクライアント役をしてもらって作品を作るのはアリですか?」
こういう相談が、本当に多いんです。
就活や転職、副業で「作品を見せてください」と言われるのは分かっている。でも、頼まれた案件がまだないから、何を作ればいいか決まらない。
分かります。答えだけ先に。
お題は「架空」ではなく「実在」から選んでください。そして、見る側が見ているのは完成度ではありません。考えた過程です。
なぜ架空案件は弱いのか
「架空の美容院のサイトを作りました」と言われたとき、見る側は何を確認できるでしょうか。
デザインがきれいかどうかは分かります。コーディングが正しいかも分かる。でも、このデザインにした理由が分からないんです。
どんなお客さんが来る店なのか。競合と何が違うのか。トップページで何を伝えれば予約につながるのか。——架空の設定だと、ここが全部「なんとなく」になります。
作る側は一生懸命考えたつもりでも、見る側にはそれが伝わりません。根拠のない判断を並べても、評価のしようがないんです。
題材は、3つの場所にあります
おすすめの順番で並べます。
① 身近な実在の店や事業
知り合いのお店、行きつけのカフェ、親の会社。実在する商売には、実在するお客さんがいます。
「このお店のお客さんは、どういう人だろう」と考える。その人がスマホで検索して、最初に見る画面をどう設計するか。——これが、仕事としてサイトを作るときにやることと同じなんです。
許可を取る必要があります。でも「勉強で作らせてください」と頼んで断られることは、ほとんどありません。使わせてもらえたら、ヒアリングの練習にもなります。
② 自分の趣味や活動
趣味のサイトを甘く見ないでほしい。
私自身、最初に作ったのは好きなミュージシャンのファンサイトでした。趣味で始めたものですが、そのサイトがきっかけで、就職氷河期に即内定をもらっています。当時はホームページを作れる人自体が珍しかったので、「作れる」だけで武器になった時代です。今はそうはいきませんが、趣味で本気で作ったという熱量は、時代が変わっても伝わります。(この話は学生・就活とホームページ制作スキルで詳しく書いています。)
趣味のサイトには、本気で伝えたいことがあります。その熱量は、架空案件では出てこない。
③ 地域の課題や団体
地元の商店街、ボランティア団体、学校行事。サイトがないか、あっても更新されていない組織は、身の回りにたくさんあります。
ここに声をかけて作らせてもらうと、お題が手に入るだけでなく、「誰かのために作った」という実績になります。架空と実在の差は、ここに出ます。
見られているのは完成度ではなく「考えた過程」
採用担当やクライアントがポートフォリオで見ているのは、サイトの見た目じゃないんです。「この人はどう考えて、この形にしたのか」を見ています。
なぜか。
きれいなサイトを作れる人は、世の中にたくさんいます。テンプレートを使えば、それなりの見た目は誰でも作れる時代です。AIに頼めば、もっと速い。
でも、「なぜこのデザインにしたのか」「なぜこの構成にしたのか」を説明できる人は少ない。
私がクライアントのサイトを作るとき、最初にやることがあります。
まず、サイトを見に来る人はどんな人なのかを考えます。どんな悩みや課題を持っているのか。一番この商品やサービスを必要としているのは誰か。なんて言ってもらえたら一番嬉しいか。
次に、競合を見ます。一番来てほしいお客さんの視点で見たときに「一番に見える状態」を作るためです。
そして、「伝えたい」を「伝わる」に変換します。この商品はすごい、ではなく、あなたにとってどんな効果があるか。どう変われるか。選ぶべき理由は何か。
最初の3秒のキャッチとリード文で興味を持ってもらう。大きな文字だけをざっと見ただけでも魅力が伝わるようにする。そして、読み進めるうちに気持ちが盛り上がって、申し込みたくなる流れを設計する。
この過程をポートフォリオに書いてください。
載せるべき5項目
- 誰のためのサイトか——ターゲットをどう設定したか
- 競合との違いをどう作ったか——比較した上での判断
- トップページの設計意図——なぜこの順番で、この言葉を選んだか
- スマホでの表示——実機で見た画面のスクリーンショット
- 改善したいと思っている点——完璧ではないことを自分で分かっている
5番目が意外かもしれません。でも、自分の作品の弱点を言える人は信用されます。完璧に見せようとする人より、「ここはもう少しこうしたかった」と言える人の方が、一緒に仕事がしやすい。
AIを使って作った作品は、評価されるのか
使い方を説明できれば、むしろ強みになります。
「AIに全部作ってもらいました」では評価されません。当然です。
でも、「AIにこういう指示を出して、出てきたものをここで判断して、ここは自分で直した」——この過程を見せられるなら、それはAIを使いこなせる人材である証拠になります。
今、現場ではAI制作の導入が急速に進んでいます。AIで作ること自体は、もう珍しくない。問題は、出てきたものを判断して、直せるかどうかです。
だから、AIを使った作品をポートフォリオに入れるなら、必ず「自分が判断した部分」を明記してください。AIが作ったまま載せたら、それはAIのポートフォリオであって、あなたのものではないので。AIを使った制作の考え方についてはAI時代にホームページ制作を習う意味も参考にしてください。
3本あれば足ります
数を増やそうとしなくて大丈夫です。
10本並べても、見る側は全部見ません。3本、よくて5本。それ以上は目を通さないのが現実です。
大事なのは、3本の「違い」が見えることです。
たとえば——
- 1本目:飲食店のサイト(実在のお店)
- 2本目:自分の趣味や活動のサイト
- 3本目:企業やサービスのLP(ランディングページ)
ジャンルを変えると、「この人はどんな依頼にも対応できそうだ」と思ってもらえます。3本とも同じようなカフェのサイトだと、幅が見えません。
ただ、1本だけでも中身が濃ければ通用する場面はあります。私が30年前の面接で即内定をもらったとき、見せたのは実質1本でした。当時と今では状況が違いますが、「この1本にどれだけ考えを詰めたか」が伝わるかどうかは、今も昔も同じです。
ポートフォリオが要らない人もいます
自分のお店や会社のサイトを作りたいだけなら、ポートフォリオは必要ありません。お客さんに見せるのはポートフォリオではなく、あなた自身のサイトです。
また、すでに知人や取引先から「作ってほしい」と頼まれている段階なら、ポートフォリオより先にその案件を作った方がいい。それ自体が最初の実績になります。
ポートフォリオが必要なのは、まだ仕事がない状態で、自分を知らない相手に実力を示す必要がある場面です。就活、転職、クラウドソーシングでの初受注。そこを越えたら、実案件の実績に切り替わっていきます。受注時の値段の決め方も知っておくと役立ちます。
ここまで読んで、何を作ろうか決まりましたか
もし決まったなら、あとは作るだけです。
ただ、お題は決まっても、作り方が分からないという方もいると思います。
先ほど書いた5項目——ターゲットの設定、競合との違い、設計意図、スマホ表示、改善点——を、実際に自分の手で考えて形にしていく。その練習ができる場所として、講座を用意しています。
学生・就活の方は「大学生・高校生・中学生のための講座(全24回・6ヶ月)」、副業として受注したい方は「社会人が副業のための講座(全24回・6ヶ月)」。それ以上に本格的にやりたい方は、「ホームページ作成を仕事にして食べていけるようになる講座(全48回・12ヶ月)」があります。
50代の方がゼロから始めて、今ではAIを使いこなしながらサイトを制作できるようになっている例もあります。年齢やスキルではなく、目的で選んでください。
「自分の目的に合う学び方が分からない」という方は、何から学べばいい?——目的別の学習ルートも参考にしてください。
あなたの経歴で何を作るのが有利か、体験レッスンで一緒に決めましょう。ポートフォリオに何を載せるかの相談だけでも構いません。
