「昔少し勉強したことがあるんですけど、何年も触ってなくて…」
こういう方に聞いてみると、たいてい同じことを言います。「前に覚えたことを全部忘れてしまった」と。
それは当たり前です。使わなければ忘れます。
でも、知っておいてほしい事実があります。
30年やっている私でも、毎日調べています。
プロが覚えていること
私が頭の中に入っているのは、「何ができるか」です。
- ここの余白を広げたいなら、paddingかmarginを使えばいい
- この色を変えたいなら、colorかbackground-colorを使えばいい
- 画面の幅に合わせて表示を変えたいなら、メディアクエリを使えばいい
使う場面は分かっている。でも正確な書き方は、その都度調べます。
paddingの値をピクセルで書くのか、パーセントで書くのか、remで書くのか。メディアクエリのブレイクポイントはいくつにするのが今は一般的か。
こういう細かい部分は、覚えていません。毎回調べます。
なぜ覚えなくていいのか
CSSのプロパティは数百あります。HTMLのタグは110個あります。
全部暗記しようとしたら、それだけで何ヶ月もかかります。そして使わなければ、半年で忘れます。
暗記は、変化に弱い知識です。
CSSの仕様は毎年少しずつ変わります。3年前の正解が今は非推奨になっていることもある。覚えた知識は古くなるんです。
それよりも、「こういうことがやりたいとき、何を調べればいいか」を知っていることの方がずっと使えます。
暗記→検索→AI——調べ方が変わった
「調べればいい」と言うと、「何をどう調べればいいか分からない」という方もいるはずです。
ここが20年で大きく変わりました。
| 時代 | 調べ方 |
|---|---|
| 昔 | 覚える。本や参考書で勉強する |
| 少し前 | 検索する。Googleでキーワードを入れて探す |
| 今 | AIに聞く。日本語で「こういうことがしたい」と伝える |
| さらに今 | AIにやってもらう。コード自体をAIが書く |
暗記の価値は、この20年で3段階下がりました。
今はAIに「ヘッダーの余白をもっと広くしたい」と伝えれば、具体的なコードが返ってきます。CSSのプロパティ名を知らなくても、やりたいことを日本語で言えれば、答えが手に入る。
覚えるのは「何ができるか」だけ
では、何も覚えなくていいのか。
そうではありません。
覚えるべきは「何ができるか」です。書き方ではありません。
たとえば——
- HTMLで見出しをつけられる(→タグ名は調べればいい)
- CSSで色を変えられる(→書き方は調べればいい)
- 画面のサイズに合わせて表示を変えられる(→具体的な方法は調べればいい)
「こういうことができるはず」と知っていれば、あとは調べるだけです。知らなければ、何を調べればいいかも分からない。
だから「何ができるか」だけは知っておく必要があります。書き方は、毎回調べればいい。
実際にAIに聞いてみる
「調べ方」を実演します。
たとえば、ブログの見出しに下線をつけたいとします。
AIに聞く場合
「h2の見出しの下に、青い下線をつけたいです。CSSを教えてください」
AIが返してくれます。
“`css
h2 {
border-bottom: 2px solid #3366cc;
padding-bottom: 8px;
}
“`
これをコピーして、自分のCSSに貼る。画面で確認する。太さや色が違ったら、「もう少し細い線にして」と追加で伝える。
検索する場合
「CSS 見出し 下線」で検索すると、同じことをやりたい人の記事が見つかります。コードをコピーして、値を自分好みに変える。
どちらのやり方でも、「h2」「border-bottom」という単語を暗記しておく必要はありません。
「見出しに線をつけたい」——やりたいことが日本語で言えれば、答えは見つかります。
ファンサイトを作って、夢中で覚えた
暗記の話をもう少しだけ。
私が最初にHTMLを覚えたのは、大好きなミュージシャンのファンサイトを作ったときでした。
暗記しようとして覚えたわけではありません。作りたいものがあって、夢中でやったら、いつの間にか覚えていた。
これが、自然な覚え方です。
教材を開いて1ページ目から順番に覚えていく方法だと、途中で「これ、何のために覚えてるんだっけ」と思い始める。そこで止まる。
でも「自分のサイトのこの部分を変えたい」という目的があると、そのために必要な知識は勝手に入ってきます。
必要なことは、必要な時に学ぶ。これが一番効率がいい。
暗記型の教材が挫折を生む構造
世の中のプログラミング教材は、多くが暗記前提で作られています。
1章:HTMLとは → 2章:基本タグ → 3章:フォーム → 4章:CSS基礎 → 5章:レイアウト → ……
きれいに並んでいるんですが、全員に同じ順番で教えている。自分のゴールと関係ない章も、順番だから飛ばせない。
3章あたりで手が止まる人が多い。覚えたことを使う場面がないので、意味が分からなくなる。
覚えても使わないから忘れる。忘れるから自分には向いていないと思う。
向いていないのではありません。順番が合っていないだけです。
この教室が不要な人
すでに自分で調べて、自分で解決できる方には、この教室は必要ありません。「何ができるか」も「どう調べるか」も分かっていて、コードを読んで意味が判断できるなら、それで十分です。
教室に来る意味があるのは、「何を調べればいいか分からない」「AIに何と聞けばいいか分からない」という方です。
調べ方さえ分かれば、あとは自分で進めます。暗記は必要ありません。
暗記しない代わりに身につけるもの
レッスンでは暗記はさせません。
代わりに身につけてもらうのは、「何ができるか」の全体像と、「やりたいことを言葉にする力」です。
AIに聞くにしても、検索するにしても、「やりたいこと」を言葉にできないと、答えにたどり着けません。
「この部分の、ここを、こうしたい」
これが言えれば、あとは調べるだけです。AIが答えてくれます。
全部頭に入っている必要はありません。必要な時にさっと調べることができれば良い。
| 講座 | 回数・期間 |
|---|---|
| HTML/CSSの基礎をしっかり学ぶ講座 | 全16回・4ヶ月 |
| AI+WordPress/Astroでホームページを作成できるようになる講座 | 全16回・4ヶ月 |
「覚える学習」ではなく「作る学習」です。作りながら、必要なことを必要な時に学んでいきます。
暗記しなくても作れます。30年やっている私がそうなので、間違いありません。
「自分の目的に合う学び方が分からない」という方は、何から学べばいい?——目的別の学習ルートも参考にしてください。
